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子供がいない夫婦の相続はどうなる?相続人の範囲と遺言書が必要な理由

2026.09.09

「私たち夫婦には子供がいないから、財産は自然に配偶者のものになるはず」——そうお考えの方は少なくありません。しかし実際には、お子様のいないご夫婦の相続では、配偶者だけでなく、親や兄弟姉妹、場合によっては甥・姪までが相続人になります。長年連れ添った配偶者が、疎遠な義兄弟と遺産分割の話し合いをしなければならない。住み慣れた自宅を手放さざるを得なくなる。そんな事態は、決して珍しくないのです。

本記事では、子供がいない夫婦の相続人の範囲と法定相続分、起こりやすいトラブル、そして遺言書によってこの問題をほぼ完全に解決できる理由を、具体的な金額例を交えて解説します。

この記事は、遺言書作成サポート・死後事務委任契約を専門とするウィルサポート株式会社(東京都新宿区神楽坂/提携:神楽坂法務合同事務所)が執筆しています。

子供がいない夫婦の相続人は誰になる?

配偶者は常に相続人になりますが、それに加えて、次の順位で定められた血族が相続人となります。子供(第1順位)がいない場合、相続人の組み合わせは主に2つのパターンに分かれます。

パターン1:親(直系尊属)が存命の場合

相続人は「配偶者+親」となり、法定相続分は配偶者が3分の2、親が3分の1です。

パターン2:親がすでに他界している場合

相続人は「配偶者+兄弟姉妹」となり、法定相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。ご高齢のご夫婦の相続では、このパターンが最も多くなります。

兄弟姉妹が先に亡くなっていたら、甥・姪が相続人に

相続人となるはずだった兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子、つまり甥・姪が代わりに相続人となります(代襲相続)。なお、兄弟姉妹の代襲相続は一代限りで、甥・姪の子までは及びません。それでも「ほとんど会ったことのない甥・姪と遺産分割協議をする」という事態は現実に起こり得ます。

モデルケースで試算:「配偶者にすべて」とはならない現実

具体的な数字で見てみましょう。

【前提】 夫が死亡。遺産は自宅マンション3,000万円+預貯金2,000万円の計5,000万円。夫の両親は他界しており、夫には疎遠な兄と妹がいる。

この場合、妻の法定相続分は4分の3の3,750万円、夫の兄妹の法定相続分は4分の1の1,250万円(2人で625万円ずつ)です。

兄妹が法定相続分を主張した場合、預貯金2,000万円のうち1,250万円を渡すと、妻の手元に残る現金は750万円。今後の生活資金として十分とは言えません。もし遺産に占める不動産の割合がもっと大きければ、支払いのために自宅の売却を迫られたり、自宅が義兄妹との共有名義になったりするおそれもあります。

実際に起こりやすいトラブル3選

1. 疎遠な義兄弟姉妹との遺産分割協議

遺言書がない場合、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要で、預貯金の解約や不動産の名義変更には全員の実印と印鑑証明書が求められます。配偶者を亡くした直後に、何十年も交流のない義兄弟へ連絡を取り、協力をお願いする——その精神的負担は計り知れません。

2. 連絡が取れない相続人がいて手続きが止まる

相続人の中に音信不通・行方不明の方がいると、遺産分割協議自体ができません。家庭裁判所で不在者財産管理人を選任してもらうなど、時間も費用もかかる手続きが必要になります。

3. 自宅が共有名義になり、住み続けられるか不安に

話し合いがまとまらず自宅が共有になると、将来の売却や修繕に共有者全員の同意が必要となり、残された配偶者の生活基盤が不安定になります。

解決策:兄弟姉妹には「遺留分」がない——遺言書で全財産を配偶者へ

ここからが本記事で最もお伝えしたいポイントです。

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分のことですが、兄弟姉妹には遺留分が認められていません(民法1042条は遺留分権利者を「兄弟姉妹以外の相続人」と定めています)。

つまり、相続人が「配偶者+兄弟姉妹」となるケースでは、「全財産を配偶者に相続させる」という遺言書を作成しておけば、兄弟姉妹から遺留分を請求される心配なく、その内容をそのまま実現できるのです。遺言書1通で、前述のトラブルのほとんどを防げます。遺留分を気にせず全財産を配偶者に残せるのは、まさにこの類型ならではの大きな利点です。

※親(直系尊属)が相続人となるパターン1では、親に遺留分(この場合は遺産の6分の1)があるため、遺言内容の設計に工夫が必要です。個別の事情に応じてご相談ください。

子供がいない夫婦の遺言書:作成の実務ポイント

夫婦それぞれが1通ずつ作成する

どちらが先に亡くなるかは誰にも分かりません。夫婦の双方が、お互いに財産を残し合う内容の遺言書をそれぞれ作成しておきましょう。なお、1通の遺言書を夫婦連名で作成すること(共同遺言)は法律で禁止されており無効となるため、必ず別々に作成します。

「予備的遺言」で万一の順番にも備える

「妻が自分より先に、または同時に亡くなっていた場合には、財産を◯◯に遺贈する」というように、二次的な行き先まで定めておくのが予備的遺言です。事故などでご夫婦が同時に亡くなった場合、法律上はお互いに相続しなかったものと扱われるため、予備的な定めがないと遺言のその部分が実現されず、想定外の相手に財産が渡る可能性があります。

配偶者居住権という選択肢も

2020年から始まった配偶者居住権を使えば、自宅の所有権と「住み続ける権利」を分けて設計することもできます。親に遺留分があるケースなどで有効な場合があります。

確実性を重視するなら公正証書遺言で

自筆の遺言書は方式の不備で無効になるリスクがあります。大切な配偶者の生活を守る遺言だからこそ、公証人が関与する公正証書遺言での作成をおすすめします(詳しくは自筆証書遺言と公正証書遺言の違いの記事をご覧ください)。

見落としがちな「その後」:残された配偶者は、おひとりさまになる

遺言書で配偶者に全財産を残せたとして、備えはそれで終わりではありません。残された配偶者は、その瞬間から身近な家族のいない「おひとりさま」になります。

ご自身の亡き後の配偶者の暮らし、そしてその配偶者が亡くなったときの葬儀・納骨・住まいの片付け・各種手続きは、誰が行うのでしょうか。子供がいないご夫婦の終活では、遺言書とあわせて、死後の手続きを専門家に託しておく死後事務委任契約まで含めて設計しておくことで、お二人のどちらが残されても安心できる備えになります。

よくある質問

Q. 遺言書があれば、義兄弟に知らせずに相続手続きができますか?

A. 「全財産を配偶者に相続させる」旨の有効な遺言書があれば、兄弟姉妹の協力(実印・印鑑証明書)がなくても預貯金の解約や不動産の名義変更が可能です。兄弟姉妹には遺留分もないため、法的な請求を受ける心配も基本的にありません。

Q. 夫婦が同時に亡くなった場合はどうなりますか?

A. 同時に死亡した場合、法律上お互いの間では相続が発生しません。それぞれの財産は、それぞれの血族側の相続人に渡ります。こうした事態に備えるのが本文でご紹介した予備的遺言です。

Q. 甥や姪にも少し財産を残したい場合は?

A. 遺言書の中で「◯◯に△△を遺贈する」と定めれば可能です。全財産を配偶者に残すか、一部を他の方に渡すかは自由に設計できます。

Q. 内縁関係(事実婚)のパートナーの場合も同じですか?

A. いいえ。内縁のパートナーには法律上の相続権が一切ありません。財産を残すには遺言書が不可欠です。詳しくは相続人がいない場合の対策の記事で解説しています。

Q. 遺言書は何歳から、いつ作ればいいですか?

A. 15歳以上であれば作成できます。ただし、認知症などで判断能力が低下すると作成が難しくなるため、「元気な今」が最良のタイミングです。内容は後からいつでも書き直せます。

まとめ:遺言書1通が、残される配偶者への何よりの贈り物

  • 子供がいない夫婦の相続人は「配偶者+親」または「配偶者+兄弟姉妹」
  • 遺言書がなければ、疎遠な義兄弟との遺産分割協議が必要になり、自宅や生活資金が脅かされることも
  • 兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言書があれば全財産を配偶者に残せる
  • 夫婦それぞれが公正証書遺言で作成し、予備的遺言まで定めておくのが理想
  • 残された配偶者の「おひとりさま」としての将来まで見据え、死後事務委任契約もセットで検討を

ウィルサポート株式会社(東京都新宿区神楽坂)では、お子様のいないご夫婦の遺言書作成を数多くお手伝いしてきました。ご相談は無料。お電話は平日10時〜18時、メール(お問い合わせフォーム)は365日受け付けており、土日祝の面談(要事前予約)や訪問でのご相談(基本無料、遠方は応相談)にも対応しています。お二人の安心のために、まずはお気軽にご相談ください。


執筆:ウィルサポート株式会社(東京都新宿区神楽坂4丁目1番1号オザワビル6階/提携:神楽坂法務合同事務所)

株式会社ウィルサポート