死後事務委任契約とは?費用相場・依頼できること・手続きの流れを解説
2026.09.11

「自分が亡くなった後、葬儀や役所の手続きは誰がやってくれるのだろう」——おひとりさまや、お子様のいないご夫婦にとって、これは決して他人事ではないお悩みです。人がひとり亡くなると、死亡届の提出から葬儀、年金の停止、賃貸住宅の解約、遺品整理まで、非常に多くの手続きが発生します。通常はご親族が担いますが、頼れる親族が近くにいない場合、これらの手続きは誰にも引き継がれないまま残ってしまいます。
そこで注目されているのが「死後事務委任契約」です。本記事では、死後事務委任契約の基本から、依頼できる内容、遺言書との違い、費用相場、契約までの流れ、注意点までをわかりやすく解説します。
この記事は、遺言書作成サポート・死後事務委任契約を専門とするウィルサポート株式会社(東京都新宿区神楽坂/提携:神楽坂法務合同事務所)が執筆しています。
死後事務委任契約とは?
死後事務委任契約とは、ご本人(委任者)が亡くなった後に必要となる葬儀・埋葬・役所への届出・遺品整理などの手続き(死後事務)を、生前のうちに信頼できる第三者(受任者)へ委任しておく契約です。
通常、これらの手続きはご親族が無償で行ってくれます。しかし、身寄りのない方や、親族が遠方・疎遠という方の場合、手続きを担う人がいないまま、大家さんや入居していた施設、付き合いの薄い遠縁の親族に思わぬ負担がかかってしまうことがあります。
死後事務委任契約を結んでおけば、ご自身の希望に沿った形で、死後の「後片付け」を確実に実行してもらうことができます。
死後事務委任契約の法的な根拠
民法上、委任契約は委任者の死亡によって終了するのが原則です(民法653条1号)。しかし、判例(最高裁平成4年9月22日判決)により、「委任者が亡くなっても契約を終了させない」という当事者間の合意は有効と認められています。これが、死後事務委任契約が法的に成り立つ根拠です。
なお、成年後見制度は「生きている間」の財産管理や身上保護を支えるための制度であり、亡くなった後の手続きには原則として効力が及びません。死後の手続きに備えるには、成年後見とは別に、死後事務委任契約という備えが必要になるのです。
死後事務委任契約で依頼できること【一覧】
「死後事務」と一口に言っても、その内容は多岐にわたります。代表的なものを時系列で整理すると、次のとおりです。
亡くなった直後に行う手続き
- 死亡診断書・死体検案書の受け取り
- 役所への死亡届・火葬許可申請書の提出
- 病院・介護施設の退院・退所手続きと費用の精算
- 葬儀・火葬の手配、喪主の代行、関係者への連絡
- 埋葬・納骨・散骨(墓じまいのご希望にも対応)
- 世帯主変更など住民票関係の届出
- 年金・健康保険・介護保険の資格喪失手続き
- 勤務先の退職に伴う各種手続き
落ち着いてから行う手続き
- 賃貸住宅の解約、住居引き渡しまでの管理
- 遺品整理、形見分けの引き渡し
- 電気・ガス・水道・電話・インターネット・クレジットカード等の解約と精算
- 運転免許証・パスポート・印鑑登録の返納、廃止手続き
- 住民税や固定資産税の納税手続き
必要に応じて行うこと
- ペットの引き取り先の手配
- 友人・知人など関係者への死亡通知
このように、依頼できる範囲は非常に幅広く、ご自身の状況や希望に合わせて契約内容を設計できます。ウィルサポートの死後事務委任契約でも、上記のような手続きを公正証書に基づいてお引き受けしています。
遺言書・成年後見制度との違い
死後事務委任契約とよく混同されるのが、遺言書と成年後見制度(任意後見契約)です。それぞれの役割は次のように異なります。
| 死後事務委任契約 | 遺言書 | 任意後見契約 | |
|---|---|---|---|
| 効力が生じる時期 | 死亡後 | 死亡後 | 判断能力の低下後(生前) |
| 主な対象 | 葬儀・届出・解約などの「手続き」 | 財産の分け方などの「相続」 | 生前の財産管理・身上保護 |
| 形式 | 契約(公正証書での作成が一般的) | 法定の方式(自筆証書・公正証書など) | 公正証書(法律上必須) |
遺言書との違い
遺言書は、財産を「誰に」「どのように」引き継ぐかという、相続に関する意思表示です。一方、葬儀の方法や役所への届出、賃貸住宅の解約といった「事務手続き」は、原則として遺言の法的効力が及ぶ事項ではありません。
つまり、財産の行き先は遺言書で、死後の手続きは死後事務委任契約で。この2つをセットで備えることで、はじめて死後への備えが完成すると言えます。ウィルサポートでも、遺言作成サポートとあわせたご提案を行っています。
成年後見制度(任意後見契約)との違い
任意後見契約は、将来、認知症などで判断能力が低下した場合に備え、財産管理や生活のサポートを託す人をあらかじめ決めておく契約です。あくまで「生前」のための制度であり、ご本人の死亡によって終了します。
「認知症への備えは任意後見契約」「亡くなった後の備えは死後事務委任契約」「財産の承継は遺言書」と役割が分かれており、近年はこの3つをセットで準備される方も増えています。
死後事務委任契約が必要な人
次のような方には、死後事務委任契約を特におすすめします。
- おひとりさま(独身の方、身寄りのない方)
- お子様のいないご夫婦
- 親族が遠方に住んでいる、または疎遠になっている方
- 親族はいるものの、高齢のご兄弟などに負担をかけたくない方
- 内縁関係・事実婚のパートナーに手続きを託したい方
- 葬儀やお墓、遺品の扱いについて、ご自身の希望を確実に実現したい方
厚生労働省「国民生活基礎調査」(2024年)によると、一人暮らしの世帯は全世帯の34%と過去最高を更新し、そのうち46.2%は65歳以上の高齢者となっています。頼れる親族が近くにいない方が増えるなか、死後事務委任契約のニーズは年々高まっています。
死後事務委任契約の費用相場
死後事務委任契約にかかる費用は、大きく分けて次の3つで構成されます。
1. 契約書の作成費用
専門家のサポートを受けて契約書を作成する場合の費用です。公正証書で作成するのが一般的で、専門家への作成支援報酬として10万〜30万円程度、公証役場へ支払う手数料として1万円強が目安となります。
2. 死後事務の執行報酬
実際に死後事務を行う受任者への報酬です。依頼する手続きの範囲によって変わりますが、一般的には50万〜100万円程度が相場とされています。
参考として、ウィルサポートでは「死亡届の提出、葬儀、住居内の遺品整理、死亡直後の緊急対応」を含むプランを48万円(税別)からご用意しています(内容により変動します。詳しくはお問い合わせください)。
3. 実費・預託金
葬儀費用や遺品整理費用、未払金の精算など、手続きに伴う実費は別途必要です。これらの実費は、生前に「預託金」として受任者へ預けておく方法が一般的で、依頼内容に応じて数十万円〜150万円程度を預けるケースが多く見られます。
費用は依頼先や依頼内容によって大きく異なるため、「契約書作成費+執行報酬+実費」の総額で比較検討することをおすすめします。
契約までの流れ【5つのステップ】
死後事務委任契約は、一般的に次のような流れで締結します。
- 無料相談・ヒアリング:現在のご状況やご希望(葬儀の方法、納骨先、遺品の扱いなど)を丁寧に伺います。
- 委任内容の設計・お見積り:必要な死後事務を洗い出し、契約内容と費用を確定します。
- 契約書案の作成:専門家が公正証書の案文を作成し、内容をご確認いただきます。
- 公証役場で公正証書を作成:公証人の面前で契約を締結し、公正証書として残します。
- 契約後のフォロー:定期的なご連絡や見守りを行い、必要に応じて内容を見直します。万一の際は、速やかに死後事務を開始します。
ご相談から契約まで、体調やご都合に合わせて無理のないペースで進められますので、ご安心ください。
死後事務委任契約を結ぶ際の注意点
受任者は「長く信頼できる相手」を選ぶ
死後事務委任契約は、契約から実際の執行まで10年、20年と長期にわたることも珍しくありません。友人や知人など個人に依頼すると、受任者が先に亡くなったり、連絡が取れなくなったりするリスクがあります。法人や専門家に依頼することで、こうしたリスクを抑えることができます。
契約は公正証書で作成する
私文書でも契約自体は可能ですが、金融機関・役所・葬儀社などの関係先に契約の存在と内容を証明するには、公証人が作成する公正証書がもっとも確実です。
預託金の管理方法を確認する
生前に預けるお金がどのように管理されるのか(分別管理の有無、解約時の返還条件など)は、契約前に必ず確認しましょう。
遺言書とあわせて準備する
死後事務にかかった費用の精算や、残った財産の行き先を明確にするためにも、遺言書とセットで作成するのが基本です。
親族がいる場合は事前に共有する
ご親族と受任者との間で行き違いが生じないよう、契約の存在や内容を可能な範囲でご親族に伝えておくと安心です。
死後事務委任契約に関するよくある質問
Q. 身寄りがまったくいなくても契約できますか?
A. 可能です。むしろ、頼れるご親族がいない方にこそ必要とされている契約です。葬儀から納骨、住まいの片付けまで、ご希望に沿って第三者が責任をもって行います。
Q. 何歳から準備すべきですか?
A. 年齢に決まりはありません。ただし、契約の締結にはご本人の判断能力が必要です。認知症などで判断能力が低下すると契約そのものができなくなるため、お元気なうちの準備をおすすめします。
Q. 契約した後に、内容の変更や解約はできますか?
A. ご本人に判断能力があるうちは、いつでも変更・解約が可能です。お気持ちや状況の変化に合わせて、定期的に内容を見直すとよいでしょう。
Q. 遺言書だけではだめですか?
A. 遺言書で法的な効力が認められるのは、主に相続や財産の処分に関する事項です。葬儀の主宰や各種解約といった「事務手続き」を確実に託すには、死後事務委任契約が必要です。
Q. 費用はいつ支払うのですか?
A. 一般的に、契約書の作成費用は契約時にお支払いいただき、執行報酬や実費は預託金などの形で生前に準備し、死後に精算します。詳細は契約内容によって異なりますので、お見積りの際にご確認ください。
まとめ:死後の手続きは、元気なうちの備えが安心につながる
死後事務委任契約は、「自分の死後の後片付けを、自分の意思で、確実に行うための契約」です。
- 葬儀・埋葬・役所への届出・遺品整理などの手続きを、生前に託しておける
- 遺言書ではカバーできない「事務手続き」を補える
- おひとりさまや、お子様のいないご夫婦の終活に特に有効
- 費用は「契約書作成費+執行報酬+実費(預託金)」で構成される
- 判断能力があるうちにしか契約できないため、早めの準備が大切
ウィルサポート株式会社(東京都新宿区神楽坂)では、公正証書による死後事務委任契約の作成から執行までを一貫してサポートしています。ご相談は無料で、お電話は平日10時〜18時、メール(お問い合わせフォーム)は365日受け付けているほか、土日祝日の面談(要事前予約)や訪問でのご相談(基本無料、遠方は応相談)にも対応しています。
「まだ早いかな」と思ったときが、実は準備のベストタイミングです。まずはお気軽にご相談ください。
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執筆:ウィルサポート株式会社(東京都新宿区神楽坂4丁目1番1号オザワビル6階/提携:神楽坂法務合同事務所)
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